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相続登記の必要書類は複雑?まずは全体像を把握しましょう
ご親族が亡くなられ、不動産の相続登記(名義変更)を進めようと調べてみたものの、「必要な書類が多すぎて、何から手をつけていいか分からない…」と途方に暮れていらっしゃいませんか?
特に、相続人にお子様がおらず、ご両親もすでに他界されている場合、ご兄弟姉妹や甥御さん・姪御さんが相続人になるケースがあります。このような場合、普段あまり目にしないような昔の戸籍まで遡って集める必要があり、手続きの複雑さは格段に増してしまいます。
多くの方が、「まさかこんなに大変だとは思わなかった」と、書類集めの段階でつまずいてしまうのが実情です。
でも、ご安心ください。この記事では、相続登記に必要な書類を一つひとつ丁寧に解説し、どのような場合にどの書類が必要になるのかを分かりやすく整理していきます。この記事を最後までお読みいただければ、ご自身の状況で集めるべき書類が明確になり、「これなら自分でも進められそうだ」あるいは「ここは専門家に任せた方が良さそうだ」という判断ができるようになるはずです。まずは一緒に、全体像から確認していきましょう。
相続登記で共通して必要になる基本の書類
相続登記の手続きでは、相続の形(遺言があるか、遺産分割協議をするかなど)にかかわらず、基本として必要になる書類があります。まずは、この「共通セット」を把握することから始めましょう。
被相続人(亡くなった方)に関する書類
亡くなった方(被相続人といいます)に関する書類は、「誰が法的な相続人なのか」を確定させるために非常に重要です。
- 出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
これは、被相続人に他に子どもがいないか、認知した子はいないかなどを確認し、相続人を一人も漏れなく確定させるために必要となります。戸籍は結婚や法律の改正、本籍地の移動(転籍)などで新しく作り直されるため、一つの役所で全て揃うことは稀です。多くの場合、現在の戸籍から一つ前の本籍地を読み取り、その役所に請求…という作業を、出生時の戸籍にたどり着くまで繰り返すことになります。この作業が、相続手続きで最も時間と手間がかかる部分の一つです。 - 住民票の除票 または 戸籍の附票
これは、登記簿に記載されている住所と、亡くなった時の最後の住所が一致していることを証明するために必要です。登記簿上の住所から最後の住所までのつながりが証明できない場合は、別途書類が必要になることもあります。
相続人(財産を受け取る方)に関する書類
次に、財産を受け取る相続人の皆さんに関する書類です。
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
被相続人が亡くなった時点(相続開始時)で、相続人がご存命であったことを証明するために必要です。相続人となる方、全員分をご用意ください。 - 不動産を取得する方の住民票
新しく不動産の名義人として登記される方の住所を証明するために必要です。この住民票に記載された住所が、新しい登記簿に記録されます。
不動産に関する書類とその他
最後に、対象となる不動産に関する書類や、相続登記申請そのものに必要な書類です。
- 固定資産評価証明書
相続登記を申請する際には、登録免許税という税金を納める必要があります。この税額は不動産の評価額を元に計算されるため、その根拠となる固定資産評価証明書が必須となります。毎年4月1日以降に、その年度の最新のものを取得してください。 - 登記申請書
法務局に「この不動産の名義を、このように変更してください」と申請するための書類です。決まった様式に沿って作成する必要があります。
なお、2024年4月1日から相続登記は義務化され、相続の開始を知った日から3年以内に申請することが法律で定められました。正当な理由なく怠った場合には過料の対象となる可能性もありますので、ご注意ください。
【パターン別】あなたのケースで追加で必要な書類
先ほどご紹介した「基本の書類」に加えて、どのような方法で相続するかによって、追加で必要になる書類が変わってきます。ご自身の状況がどれに当てはまるか、確認してみましょう。

①法定相続分で登記する場合
遺言書がなく、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」も行わず、法律で定められた割合(法定相続分)で不動産を共有名義にする場合です。
この場合は、基本の書類一式があれば手続きを進められます。一般に遺産分割協議書を作成しない分、手続きが簡便になることがありますが、戸籍の確認や共有名義のデメリット等、個別事情により必要書類や手続きが変わるため事前確認をお勧めします。
ただし、不動産を共有名義にすると、将来その不動産を売却したり、誰かに貸したりする際に、共有者全員の同意が必要になるなどのデメリットも考えられます。安易にこの方法を選択せず、将来のことまで見据えて検討することが大切です。
②遺産分割協議で登記する場合
遺言書がなく、相続人の皆さんで話し合い、「この不動産は長男が一人で相続する」といったように、法定相続分とは異なる割合で財産を分ける場合です。この方法が、実務上は最も多く選択されています。
この場合、基本の書類に加えて以下の2点が必須となります。
- 遺産分割協議書
誰がどの財産を相続するのか、相続人全員で合意した内容をまとめた書類です。法務局に提出するためには、相続人全員の署名と、実印での押印が不可欠です。 - 相続人全員の印鑑証明書
印鑑証明書は、印鑑登録された印影と遺産分割協議書に押された印影が一致することを証する書類です。
③遺言書に基づいて登記する場合
亡くなった方が生前に遺言書を遺していた場合の手続きです。遺言書の種類によって、必要なものが少し異なります。
- 遺言書
登記申請の根拠となる最も重要な書類です。 - (自筆証書遺言の場合)家庭裁判所の検認済証明書
亡くなった方ご自身で書かれた遺言書(自筆証書遺言)が見つかった場合、原則として、家庭裁判所で「検認」という手続きを経る必要があります。これは遺言書の偽造や変造を防ぐための手続きで、検認が終わると、その証明書が発行されます。
ただし、法務局で遺言書を保管する制度を利用している場合は、この検認手続きは不要です。 - (公正証書遺言の場合)
公証役場で作成された公正証書遺言の場合は、検認手続きは必要ありません。遺言書の正本または謄本をそのまま提出します。
【要注意】兄弟姉妹・甥姪が相続人になる場合の必要書類
ここからが、特に注意が必要なケースです。亡くなった方にお子様がおらず、ご両親がすでに他界されている場合に、亡くなった方のご兄弟姉妹やそのお子様である甥御さん・姪御さんが相続人になることがあります。
この場合、なぜ手続きが複雑になり、集める書類が格段に増えてしまうのでしょうか。
【司法書士より】相続人が兄弟姉妹や甥姪の場合は、覚悟が必要です
私が担当させていただいた案件でも、相続人が兄弟姉妹や甥姪になるケースは少なくありません。ご相談に来られる方の多くが、ご自身で戸籍を集めようと試みたものの、途中で挫折してしまった、という経験をお持ちです。「まさか、会ったこともない親戚の戸籍まで必要になるとは思わなかった」と驚かれることも一度や二度ではありません。
特に、被相続人がご高齢で、そのご兄弟もすでに亡くなっている場合、代襲相続で甥や姪が相続人になります。その甥や姪がさらに亡くなっていると…というように、相続関係がネズミ算式に広がっていくことさえあるのです。
ご自身の労力や時間、そして何より精神的な負担を考えると、このケースに該当した場合は、早い段階で専門家にご相談いただくのが賢明な選択かもしれません。それほど、このケースの戸籍収集は大変な作業なのです。
なぜ戸籍集めが大変になるのか?その理由を解説
「なぜ、亡くなった親の戸籍まで必要なの?」と疑問に思われるのも当然です。その理由は、法律で定められた「相続順位」にあります。
- 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫など)
- 第2順位:直系尊属(父母、祖父母など)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)
相続は、必ず上の順位の人から権利を得ます。つまり、第3順位である兄弟姉妹が相続人になるためには、「第1順位の子や孫がいないこと」そして「第2順位の父母や祖父母もすでに亡くなっていること」の2つを、すべて戸籍謄本で証明しなければならないのです。
この「いないことの証明」のために、膨大な量の戸籍を集める必要が出てくる、というわけです。
兄弟姉妹が相続人:追加で必要になる戸籍の範囲
ご兄弟姉妹が相続人になる場合、基本の書類に加えて、以下の戸籍が追加で必要になります。
- 被相続人の両親(父・母)それぞれの、出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
これにより、「第2順位である両親がすでに亡くなっていること」を証明します。ご両親の戸籍を出生まで遡る作業は、被相続人の戸籍集めと同様に、大変な手間がかかることが多いです。
甥・姪が相続人(代襲相続):さらに複雑になるケース
相続人となるはずだった兄弟姉妹が、被相続人より先に亡くなっている場合、その方の子どもである甥や姪が代わって相続人になります。これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。
この場合、上記の書類に加えて、さらに以下の戸籍が必要になります。
- 亡くなっている兄弟姉妹の、出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
誰がいつ亡くなり、誰がその権利を引き継ぐのかを、すべて戸籍で繋げていく必要があります。相続人の数が多くなればなるほど、その関係は複雑になり、書類集めの難易度は飛躍的に上がります。

相続登記の書類に関するよくある質問(Q&A)
最後に、相続登記の書類に関して、お客様からよくいただくご質問にお答えします。
Q1. 書類に有効期限はありますか?
A. 法務局に申請する相続登記に関しては、戸籍謄本など多くの書類に法的な“有効期限”は定められていませんが、金融機関に対する相続手続きでは、発行から一定期間内の書類の提出を求められることが一般的です。手続き先の運用に従って新しい書類を用意することを検討してください。
戸籍謄本や住民票の除票などは、何ヶ月も前に取得したものでも、相続登記の申請に使用できます。
ただし、注意点が2つあります。
- 遺産分割協議で必要となる相続人の印鑑証明書については、不動産以外の預貯金などの手続きで金融機関から「発行後3ヶ月以内」や「6ヶ月以内」のものを求められることが一般的です。そのため、他の手続きも同時に進める場合は、新しいものを取得しておくとスムーズです。
- 相続人の現在の戸籍謄本は、「被相続人が亡くなった日以降に取得したもの」である必要があります。これは、相続開始時に相続人が存命であったことを証明するためです。
Q2. 戸籍や住民票が取得できない場合はどうすれば?
A. 代わりとなる書類を取得するか、事情を説明する書類を作成します。
古い戸籍や住民票の除票は、市区町村での保存期間(住民票の除票は原則5年)が過ぎていたり、戦争などで焼失してしまったりして、取得できないことがあります。
そのような場合は、まず役所で「廃棄済証明書」や「不在籍証明書・不在住証明書」といった、「発行できないことを証明する書類」を取得します。その上で、法務局に対し、「このような理由で戸籍が取得できませんでした。他に相続人はいません」といった内容の「上申書」を相続人全員で作成・署名・実印押印して提出することで、手続きを進められる場合があります。
このあたりの判断は専門知識が必要となるため、もし書類が取得できずにお困りの際は、専門家にご相談いただくことをお勧めします。
Q3. 「法定相続情報一覧図」を使えば楽になりますか?
A. はい、相続手続きが複数ある場合に大変便利です。
「法定相続情報一覧図」とは、集めた戸籍一式を法務局に提出し、「この家の相続関係はこの通りです」ということを法務局の登記官に証明してもらう制度です。一度この一覧図の写しを取得すれば、その後の手続きでは、大量の戸籍謄本の束の代わりに、その紙1枚を提出するだけで済むようになります。
相続登記はもちろん、銀行預金の解約、証券口座の名義変更、相続税の申告など、複数の手続きが必要な場合には、戸籍の束を何度も出し直す手間が省けるため、非常に大きなメリットがあります。詳しくは「法定相続情報証明制度」について – 法務局 – 法務省のページもご覧ください。
ただし、この一覧図を作成するためには、結局最初に全ての戸籍謄本を集める必要がありますので、戸籍集めそのものが楽になるわけではない点には注意が必要です。
書類集めが困難な方へ。司法書士がすべて代行します
ここまでお読みいただき、相続登記に必要な書類の全体像をご理解いただけたかと思います。同時に、「思った以上に大変そうだ」「特に自分のケースは複雑で、一人で集めるのは難しいかもしれない」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
相続登記の書類集めは、時間と労力がかかるだけでなく、法的な知識も必要とされる場面が多々あります。特に、ご兄弟姉妹や甥姪が相続人になるケースでは、集めるべき戸籍の範囲が広大になり、途中で挫折してしまう方も少なくありません。
もし、少しでもご不安を感じられたら、私たち司法書士にお任せください。司法書士は、相続登記の専門家として、皆様に代わって面倒な戸籍の収集から、遺産分割協議書の作成、法務局への登記申請まで、すべての手続きを代行することができます。
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【事務所情報】
所在地:栃木県宇都宮市西川田町923番地20
氏名:大森 亮一
所属:栃木県司法書士会

私は栃木県那須塩原市(旧黒磯市)出身で、現在は宇都宮市を拠点に司法書士として活動しています。中学生の職場体験がきっかけで司法書士の世界に興味を持ち、相続や遺言、相続登記などをご相談いただくなかで、これまで県内で1,000件以上のお手伝いをしてきました。特に相続放棄や遺言書作成、不動産登記の分野では、気軽に相談できる雰囲気を大切にしており、初回相談は無料で対応しています。税理士や宅建士などと連携し、多面的な視点からお悩みに寄り添うことを心がけています。栃木の地域に根ざし、一人でも多くの方の安心を支える存在でありたいと願っています。
